初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「相手が柊哉さんで良かったと思ってる。桐ケ谷不動産の経営難を思えば相手が誰でも結婚しなくちゃいけないと思いながらも憂鬱たった。でも顔合わせで柊哉さんを見たときそんな気持ちは無くなったの。ああこの人となら大丈夫だって」

「一目惚れ?」

「ちょっと違うような。一目で恋に落ちたとか激しいものじゃなくて、穏やかな好感って言うか……」

「ふーん。まあなんとなく初めから好ましい相手っているものね。香子にとってそれが旦那様だったって訳か……それって凄い幸運だよね」

紫穂の言葉通りだと思った。

相手が柊哉さんだからこそ、今幸せを感じられているのだから。

その後、メインの豆乳鍋が運ばれて来て、私たちは本格的に食事に入った。

柔らかな肉に、沢山の味を楽しめるよう工夫を凝らした豆腐料理。美味しいお酒。

それらをおしゃべりと共に楽しみしばらくすると、紫穂が溜息混じりに呟いた。

「私も香子みたいに幸せな結婚がしたい」

「どうしたの急に」

紫穂が結婚したいなんて言っているのを聞くのは初めてだ。

「親がうるさくて」

「……ああ」

紫穂の実家は老舗の飲食店で、子供は彼女しかいない。
そのため、しっかりした相手と結婚して跡を継ぐことを期待されていると言っていたっけ。

「紫穂も大変だね」

「ほんと、結婚のタイミングなんて自分で決めるものなのにね」

そうは言っても家の事情を無視は出来ないから、悩んでいるのだろうな。

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