初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「最初の日に何か有ったの?」

「特には。と言うより余裕が無くてあまり記憶がないの」

鮮明に覚えているのは、どうしようもなく恥ずかしかったのと痛かったのくらい。

初めてで緊張していて、はじめは怖かったけど、だんだんとそんな感情も消え去る程余裕がなくなった。

「相性の問題……」

紫穂がぽつりと呟く。

「えっ?」

私がぎょっとして目を見開くと、紫穂が慌ててフォローに入る。

「ごめん失言だった。そんな話を聞いたことが有ったと思い出しただけで香子のことじゃないよ」

「でも、その可能性はあるかも」

私は相性なんて気にする発想も暇も無かったけど、柊哉さんは違うもの。

「たった一回で判断はしないでしょ。それより本人には聞いてみたの?」

「柊哉さんに? まさか聞けないよ」

困ったことが有ったら遠慮なく相談してくれと言われているけれど、内容的に口に出来ない。

「どうして?」

「だってガツガツしていると思われるのは嫌だし、そんなことばっかり考えていると誤解されるのも……」

「誤解もなにも考えて悩んでいるんでしょ?」

そうだけど、柊哉さんに知られたくない悩みだから困っているのに。

「何かうまい聞き方はないかな? さり気なく柊哉さんがどう思っているか分かるような」

「ないって。正直に聞くのが一番。彼優しいんでしょう? 自分の奥さんが悩んでいるのを適当にあしらったりはしないんじゃないかな」

「そうだけど」

柊哉さんに冷たく突き放されるなんて想像出来ないけど、真摯な態度で「ごめん、香子とは合わない」なんて言われてしまうのもきつい。

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