初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「お酒を飲み過ぎたのは、ストレスから?」
「ストレス?」
「香子は何か俺に言いたいことが有るんじゃないか?」
「ど、どうして?」
確かに言いたいことは有るけど、なぜ柊哉さんが知っているの?
「ここ数日の態度を見ていて思ったんだけど」
私は頭を抱えたい思いになった。
柊哉さんに言えないって散々悩んでたのに、態度から知られてしまうなんて。
これは柊哉さんが鋭いの? それとも私の取り繕う能力が低いの?
などと余計なことまで考え慌てている私に対して、柊哉さんは相変わらず落ち着き払っている。
「香子にとって俺はまだ心許せる相手ではないかもしれないけど、夫婦として信頼し合えるようになりたいと思っている」
だから気になることがあるなら話して欲しい。と柊哉さんは言う。
その態度は真摯で、誠実に今後の夫婦の関係を考えてくれているのだと伝わって来る。
それに比べて私の悩みって……。さっきまで深刻に悩んでいたくせに急に軽い悩みのような気がし始める。
でも、それでも気持ちを言った方がいい?
柊哉さんは私に心を開こうとしてくれている。だったら私も自分を偽らないで正直になった方がいいんじゃない?
恋愛結婚ではない私たちは、普通の恋人たちより言葉が必要なのだと思う。
今「何でもない」と誤魔化しても、勘の良い柊哉さんはきっと嘘だと気付く。
そしたら彼の中で私との距離がますます開いてしまうかも……それは嫌!
目まぐるしく考えた私は、覚悟を決めて口を開いた。
「柊哉さんとの夫婦関係に悩んでいるんです」
私の言葉に、彼は目を瞠る。
何か言いたそうな彼が声を出すより先に私は続けた。
「私たちずっと別々に眠っているから。このままでいいのかなと不安になって……柊哉さんは私のことをどう思ってますか?」
覚悟を決めたし、酔いの勢いも有った。それでも顔から火が出る程恥ずかしかったし、返事が怖かった。
いつもは反応の早い柊哉さんが無言なところも不安を煽る。