初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
沈黙が辛くなった頃、ようやく柊哉さんの声がした。

「ごめん……俺のせいで悩んでたんだな」
「あ、いえ。柊哉さんのせいではないので」

夫婦の在り方について悩んでいる訳であって、謝って欲しいんじゃない。

ただ柊哉さんの気持ちが知りたいだけ。答えを求める視線を送る。

「さっきも言ったが俺は良い夫婦になりたいと思っている。少しずつ信頼を築いて行きたい。夜誘わなかったのは時間を置いた方がいいと思ったからで、それで香子を不安にさせる気はなかった」

「時間を置く?」

柊哉さんは頷く。

「もっと親しくなってからの方がいいと思った。夫婦の義務だからと言って無理強いしたくなかったんだ」

「無理だなんて……私そんな風に考えてませんでした」

一緒に寝ないのを気にしたのも、夫婦の義務だからではなかった。ただ、彼にもっと近づきたかったから。でも柊哉さんは違うのかなと不安で寂しくなった。

「ごめん、でも香子に言われるまで思い違いをしていた」

柊哉さんが私の手を取った。指先から彼の体温が伝わって来る。

「香子が嫌じゃないなら、一緒に寝よう」

誘いの言葉に胸がどきりとする。だけど彼の声も眼差しも優しくて、私は安心して微笑んだ。

「はい」

ふわりと身体を抱き寄せられた。

柊哉さんの固い胸に頬を寄せる形になる。彼の鼓動を感じながら目を閉じた。

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