初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
俺は迷わずに手を挙げた。
後継者の地位を切望しているからだ。
その為なら見知らぬ女性と結婚するくらい、大した問題ではない。
相手に恋愛感情を持てるとは思えないが、家族として尊重することは出来るはずだ。
祖父の手腕で話は急速に進み、桐ケ谷香子と顔を合わせと入籍を行った。
初対面の彼女も、入籍の席での彼女も表情がなく、何を感じているのか読み取るのが難しかった。
あまり日が無かったので、ろくに話し合いもしていなかったが、彼女も自分と同じように条件面からこの結婚を受けた為だろうと考えていた。
桐ヶ谷家には、話がまとまり次第多額の援助が行われる手はずになっていて香子もそれを知っているはずだ。
淡々とした態度の彼女に不服は無かった。割り切っている方が、こちらもやりやすい。
初めての夜に妻になったばかりの彼女を抱いた。
夫婦の義務だと思ったからだ。だが彼女が初めてだとは想定外だった。
途中慣れていない様子にもしやと思ったが、香子が拒否しなかったのでそのまま最後まで続けてしまった。
事が終わったあと、身体の負担からぐったりする香子を見て、罪悪感がこみ上げた。
彼女は初めてだったのに、ほとんど気遣いの言葉をかけてやらなかったのだから。