初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
二十五歳の働く女性だからそれなりの経験はあるのだろうと思い込んでいた。

だから政略結婚にも応じられるのだろうと。

それが誤解かもしれないと気付いたとき、彼女の気持ちを知りたくなり言葉にした。

『結婚したことを後悔しているのか?本当は俺が相手では嫌だったか?』

香子は驚いた様子で否定をした。

『まさか! 柊哉さんに不満なんてありません。むしろ私の方が力不足です』

必死に訴える様子に、他意は見られない。彼女はこの結婚生活に真摯に向き合おうとしているのかもしれない。

上辺だけの自分と違う。ある意味覚悟を持って結婚したんじゃないか?

『私も柊哉さんと家族になりたいと思ったから結婚を決心出来たんです』

香子は可愛らしい笑顔でそう言った。

初めて見た自然な表情に胸が温かくなり、気付けば自然と言葉が零れた。

純粋な気持ちなど何もなく、割り切った結婚で構わないと思っていたはずなのに。

『俺も香子が結婚相手で良かった』と――。




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