初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
月末はやはり通常より仕事が多い。
残業する予定で来て正解だった。
黙々と処理をしていると、小林さんに声をかけられた。
「桐ケ谷さん、ちょっといいですか?」
珍しいと思いながら、顔を上げた。
小林さんは本当に覚えが良く、処理方法は一度教えただけでマスターする。こうやって質問をしてくるのは稀だ。
「どうしたの?」
彼女は憮然とした様子で、私の机の上に細かい数字が記載された、A4の紙を置いた。
「これ見て下さいよ。先月の数字がめちゃくちゃ」
データは先月退職した池田さんから引き継いだ、資材発注に関してだった。
小林さんは嫌がっていたけど、真田課長の指示で彼女の担当に決まったばかりのもの。
しばらくの間フォローする為、私も一緒に引継ぎを受けたけれど、経験の無い業務なので正直あまり自信がない。
とはいえ、指導員としては放置する訳にはいかないので、データに目を通してみる。
十一月一日から発注した資材の金額や数量などが記載された一覧だ。
ただ購入数に対し使用数が合っていないようだ。でも、めちゃくちゃと言うのは言い過ぎな気がした。
「どこかで数字を入力ミスしたんじゃない?」
見つけ出して直せばいいだけと思うけど。
だけど小林さんは苛立ったように目付きを険しくした。
「私の管理は間違ってません。違っているとしたら先月からの繰り越し部分です。でも過去まで遡って修正なんてしている時間が無いんです。仕事はこれだけじゃないんだし」
「急ぎの仕事があるの?」
彼女の担当でそこまで急ぎはないと思うけれど。
「はい。真田課長から明日の会議用の資料作成を指示されてます」
「そうなんだ……」
明日の会議だったらもうあまり時間はない。それで珍しく焦っているのだろうな。
仕方ない、と私は資材管理のリストを引き取った。
「これは私がやっておくから、小林さんは真田課長の仕事をやって」
「はい、わかりました」
小林さんは満足したのか笑顔で頷いた。
今日はかなり遅くなってしまうかも……私は小さく溜息を吐くと、中断していた仕事の続きをした。
残業する予定で来て正解だった。
黙々と処理をしていると、小林さんに声をかけられた。
「桐ケ谷さん、ちょっといいですか?」
珍しいと思いながら、顔を上げた。
小林さんは本当に覚えが良く、処理方法は一度教えただけでマスターする。こうやって質問をしてくるのは稀だ。
「どうしたの?」
彼女は憮然とした様子で、私の机の上に細かい数字が記載された、A4の紙を置いた。
「これ見て下さいよ。先月の数字がめちゃくちゃ」
データは先月退職した池田さんから引き継いだ、資材発注に関してだった。
小林さんは嫌がっていたけど、真田課長の指示で彼女の担当に決まったばかりのもの。
しばらくの間フォローする為、私も一緒に引継ぎを受けたけれど、経験の無い業務なので正直あまり自信がない。
とはいえ、指導員としては放置する訳にはいかないので、データに目を通してみる。
十一月一日から発注した資材の金額や数量などが記載された一覧だ。
ただ購入数に対し使用数が合っていないようだ。でも、めちゃくちゃと言うのは言い過ぎな気がした。
「どこかで数字を入力ミスしたんじゃない?」
見つけ出して直せばいいだけと思うけど。
だけど小林さんは苛立ったように目付きを険しくした。
「私の管理は間違ってません。違っているとしたら先月からの繰り越し部分です。でも過去まで遡って修正なんてしている時間が無いんです。仕事はこれだけじゃないんだし」
「急ぎの仕事があるの?」
彼女の担当でそこまで急ぎはないと思うけれど。
「はい。真田課長から明日の会議用の資料作成を指示されてます」
「そうなんだ……」
明日の会議だったらもうあまり時間はない。それで珍しく焦っているのだろうな。
仕方ない、と私は資材管理のリストを引き取った。
「これは私がやっておくから、小林さんは真田課長の仕事をやって」
「はい、わかりました」
小林さんは満足したのか笑顔で頷いた。
今日はかなり遅くなってしまうかも……私は小さく溜息を吐くと、中断していた仕事の続きをした。