初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
進藤君と一緒に総務のフロアへ向かう。

「ここ座って。それで聞きたいことって?」

私は自席の隣の席の椅子を彼に勧めた。

「社内システムで入れないところがあるんだよ。特別に申請が必要って聞いたんだけど、どうすればいいんだ?」

「申請書に記入して上司の承認を貰って、システム担当に提出なんだけど、経営企画だったら庶務担当の子がいるから、言えばやってくれると思うよ」

「彼女定時で帰るからなかなか話す時間がないんだよ。自分で聞いた方が早いからさ」

「そうなんだ」

定時間内に席にいられないなんて、進藤君はかなり忙しいみたいだ。

私は自分のパソコンで総務部が管理している申請書フォルダを開いた。

ここには全ての申請書類が保管されていて、用途別に整理されているので直ぐに必要なものを捜し出せる。

「申請書と書き方の見本をメールで送っておくね。依頼したら翌日には使えるようになると思うよ」

話ながら進藤君のアドレスを捜し、申請書を添付して送信した。

「助かる」

進藤君はほっとしたように笑うと、コーヒーの残りを飲み干した。

「総務に同期がいると心強いな」

「そう?」

「会社のことなら何でも分かってるだろ?」

「まあ、手続のこととかなら」

進藤君はかたりと椅子を鳴らして立ち上がった。

「これからもなんかあったら、桐ケ谷に頼むよ、よろしくな」

彼は笑顔を浮かべ颯爽と経営企画室に戻って行く。

私は戸惑いを覚えながら後ろ姿を見送った。

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