初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
十二月は本決算ではないけれど、仕事が多い時期だ。

だけど心が満たされていると、仕事も上手く行くのか、いつもよりも順調に月初の処理をこなせていた。

柊哉さんとの旅行は日光方面。一泊だけど観光したり温泉に入ったり楽しむつもり。

今度の土曜日の早朝に出発して、日曜日の夜に帰宅する予定。

気分よく仕事を進めていると、名前を呼ばれた。

「桐ケ谷」

この声は……顔を上げると、そこに居たのは予想通り進藤君だった。

十一月最終日の残業中に会って以来だ。

同じ本社勤務でも、仕事で関わりがないと顔を合わせる機会は少ない。

「進藤君どうしたの?」

また必要書類があるのだろうか。

進藤君は朱色に金の柄の入った、高級そうな紙袋を私の机に置いた。

「これ、関西土産」

「え?……私に?」

私は戸惑いながら進藤君を見た。

関西に出張に行ったのだろうけど、なぜ私にお土産を持って来るのだろう。

普通は自分の所属している部署に買って来るものだと思うけど。
< 64 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop