初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
殆ど口を利かなかった私に、小林さんが少し不満そうに話かけて来た。

「桐ケ谷さん、進藤さんとは交流ないって言ってたのに、嘘じゃないですか」

「嘘なんて言ってないよ。進藤君とは本当に疎遠だったから」

「それならどうしてお土産なんてくれるんですか?」

「この前仕事で少し質問を受けたんだけど、そのお礼って言ってたけど」

「ええ? 本当ですか?」

疑われても困ってしまう。私だって彼の考えは分からないのだから。

「小林さん、進藤君のお土産は他の人にも配ってね。総務の仕事に対してくれたお土産だから」

この話は切り上げようと、小林さんに指示をする。

でも彼女は余程進藤君が気になるのか、「はい」と言いながらもその場から動かない。

「桐ケ谷さん、進藤さんと飲みに行くときは私も誘ってくださいね」

「え?」

「私、進藤さんみたいなタイプ好みなんです」

「……そうなんだ。でも私が彼と飲みに行く機会はないと思うよ」

早く配っておいでと、もう一度促すとようやく彼女はその場を離れ、てきぱきと抹茶ケーキを配り始めた。

私はその様子を横目で見ながら仕事を再開する。面倒なことになりそうな予感をひしひしと感じていた。


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