初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
私の予感は半分当たった。

小林さんは進藤君が相当気に入ったのか、翌日も彼の話題ばかり口にする。

私にあれこれ彼について質問してくる。

答えられる範囲で返事をしていたけれど、三日経っても熱は冷めない様子でその盛り上がりに不安を感じていた。

進藤君が、やたらと総務に顔を出すのも原因だと思う。定時間内にはオフィスに居られないと言っていたのはどうなったのだろう。



小さな問題は有りながらも予定通り仕事をこなし、週末がやって来た。

待ちに待った、修哉さんとのはじめての旅行へ出発だ。

旅館のチェックインの前にいろいろ見て回れるように、早めにマンションを出た。

あいにくの曇り空。雨が降りそうな天気だったけれど、車だから移動に問題はないし、傘を差しながらの観光でも柊哉さんとだったら楽しめると思う。

有名な観光スポットである由緒ある神社を散策する。

子供の頃学校行事で来た覚えがあるけれど、記憶はぼんやりとしかない。

神社に興味がなかったからだけれど、柊哉さんは好きだそうだ。

そう聞くと以前のように素通りせずに、しっかりと景色を目に焼き付ける自分がいた。

「神社って地味なイメージだったけど、よく見ると結構派手なんですね」

「そう、意外と多彩で使われている色には意味があるんだ。例えば青は……」

柊哉さんは歩きながら説明してくれる。耳に心地よい低い声。安心した気持ちになる。

十二月の冷たい空気に中でも、気持ちが明るいからか寒さは感じなかった。



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