初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~


「意外かな? 子供の頃の家族旅行では迷子になる程うろうろする子だったんですよ」

それで何度も両親を心配させたっけ。

「柊哉さんだって子供の頃は、今みたいに落ち着いていなかったでしょう?」

今となっては大人の男性の余裕に溢れている彼だって、子供時代はあるのだから。想像は出来ないけど、お母さまに怒られたりした経験だってあるはずだ。

そう言えばお互いの子供時代の話は殆どしたことが無かったな。

柊哉さんの小さな頃の話を聞いてみたい。それだけでなく彼のことを沢山知りたい。

だけど柊哉さんはあまり乗り気ではない様子だった。

「両親と旅行をした記憶はないな」

そう言うと、話題を変えるように、館内のマップを私に見せる。

「一階にサロンがある。庭園を眺めながらゆっくり出来るみたいだ、行ってみよう」

まるで誤魔化しているかのような態度に、違和感を覚えた。

柊哉さんは、昔の話を嫌がっている? でもどうしてだろう。彼は桜川家の一族で家庭環境は恵まれているはず。

結婚前に一度挨拶に伺った実家は立派で、ご両親だって健在。

私との結婚を進めた彼の祖父もまだまだ現役といった様子だった。

それなのになぜ?……彼は何かを隠している?

初めて柊哉さんに疑問を持った。

だけどそれを口にするのは躊躇われ、私は笑顔を作り柊哉さんと共に部屋を出た。
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