初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
サロンからは見事な日本庭園を眺めることが出来た。

池庭に石灯篭、味わいのある樹々。

老舗の温泉宿らしい落ち着いて情緒溢れる雰囲気だ。

サロンは宿泊客しか入れないためか人はまばらで、ゆったりと寛げる。

柊哉さんとおしゃべりをしながら、抹茶と和菓子を味わい、その後庭園を散策して部屋に戻った。

部屋での豪勢な夕食を終えた後は、交代で部屋の露天風呂に入った。

柊哉さんが「一緒に入ろうか」なんて言い出したけれど、私がどうしても駄目。

「無理です」

「夫婦なんだからいいだろ?」

「でも、恥ずかしいし」

「今更?」

にやりとしながら突っ込まれ、言葉に詰まった私は、無理やり柊哉さんを、露天風呂に繋ががる着替えスペースに押しやった。

まったく、最近の柊哉さんは何かと私をからかうんだから。

入籍当時の方が紳士的だったように思うのは、きっと気のせいじゃない。

だけど、彼とくだらないことで騒ぐのは嫌いじゃなく、むしろ好き。

外ではエリートで近寄りがたいオーラを話す彼が、家では普通の旦那様だなんてきっと誰も知らないはずだ。

あと、意外と強引なところとか、甘い言葉を言うところとか……。

私だけが見ることの出来る姿があると思うと、くすぐったい気持ちになった。

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