初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
柊哉さんがお風呂に入っている間に、荷物の整理をした。

必要最低限の物しか持って来ていないのに、なぜか直ぐにごちゃごちゃする。

お風呂のあとのお手入れセットを出していると、静かな部屋に着信音が鳴り響いた。
机に置き去りの柊哉さんのスマートフォンからだ。

着信音はしばらく続きようやく終わったと思ったら、再び音が鳴る……結構しつこく鳴っている。

その後二度同じことを繰り返したあと、諦めたのか部屋に静けさが戻った。

今の着信は誰からなのかな?

短時間に何度も何度も。

私だったら電話をかけた相手が出なかったら、時間を置いてからかけるけど、今の電話は柊哉さんが出る迄は諦めないと主張しているかのような執拗さだった。

嫌な予感がする。お風呂をゆっくり楽しんで欲しかったけれど、緊急事態かもしれない。

私は彼のスマートフォンを手にすると、露天風呂へ繋がる脱衣スペースの扉を開いた。

近くに鹿威しがあるのか、水の流れる音に加え「コーン」と耳に心地よい音が聞こえて来る。
すりガラスの向こうにお風呂があり、柊哉さんがお湯に浸かっているシルエットがうっすらと見えた。

「柊哉さん」

声をかけると、柊哉さんが振り返る様子がガラス越しに見えた。
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