初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
掘りごたつで向き合う私達。
柊哉さんのスマートフォンは、机の上に表向きに置いてある。

「さっきの電話、母親からだった」

彼の言葉は予想外だった。なんとなくだけど私の知らない友達とか、昔の彼女とか、家族と会社以外の関係者を想像していたから。

「もしかして、実家で何か有った? 帰った方がいいですか?」

お義母様とは顔合わせのときと、入籍の食事会の場で会っている。
柊哉さんの母親にしては年若く、美人だけど大人しそうな印象な人で、せっかちそうな雰囲気は全く無かった。

あのお義母様が執拗に電話をかけて来るなんて、余程の緊急事態なのでは?

でも、柊哉さんは「大丈夫」と言い、言葉を選ぶようにゆっくりと声を出した。

「本当に大した用件ではないから帰る必要はない。でも香子はしつこい電話を変に思っただろ? この先も同じような状況が起きるかもしれないから、うちの事情を話しておきたいんだ」

「桜川家の事情?」

「それもあるけど、どちらかと言えば俺と両親について」

私は少し緊張して身構えた。

結婚して日は浅いものの、彼の家族の話題はこれまで何度か出ている。

けれどその度に、はぐらかされていた。どうしてか気になったものの、追及出来ないまま過ごしていた。

その理由を今、話してくれるの?

私はじっと彼を見つめながら、続きの言葉を待つ。
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