初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「驚くよな。その相手は俺の母だ。なんとか離婚せずに今日まで来ている。ただ父の行動で相当ストレスを貯めていて、ときどき爆発するんだ。さっきの電話も衝動的にかけていたらしい」

「そ、そうなの……」

傍から見れば、人が羨むような完璧な家庭に見えたのに、実情は分からないものだ。

「今後もさっきみたいな連絡は来ると思う。でも香子には迷惑をかけないようにするから心配しないで欲しい」

柊哉さんの言葉に、はっとした。

彼はもしかしたら、私のモヤモヤした気持ちを察したのかもしれない。

だから心配させないように、言い辛いであろう家族の事情を打ち明けて来た。

驚きと少しの呆れに占められていた心の中が、優しい喜びに変わって行く。

「柊哉さん、話してくれてありがとう。私、さっきの電話を少し不安に感じていたから、事情が分かってほっとした」

柊哉さんは私の発言に、驚いたようだった。

「心配してそうなのは気付いていたけど……ありがとうなんて言われるとは思わなかったな」

「だって、柊哉さんの気遣いを感じて嬉しくなったから」

「そうか」

ほっとした空気が辺りに漂う。柊哉さんも少し緊張していたのかな?
< 76 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop