初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「私も柊哉さんの夢が叶って欲しいと思う。仕事だけでなく、親戚の人たちが羨ましいと思う程温かい家庭にして、幸せになろうね」
幼い頃に彼が受けた傷は、いつかきっと癒えるはず。
だって柊哉さんは今、とても柔らかな表情をしているもの。
心を閉ざした人がする顔じゃない。
「香子が奥さんで良かった」
不意打ちで言われ、心臓がどくんと跳ねた。
「な、なんで急に……」
「そう思ったから言った。ありがとうな」
笑顔と共に告げられた言葉。私は頬が熱を持つのを止められない。
嬉しいのと恥ずかしいのと……柊哉さんが好きな気持ちと。
「そうやって顔を赤くする香子が可愛くて仕方ない」
可愛いって……柊哉さんはどうしちゃったの?
こんな台詞あまり言わない人だと思ってたのに。
私は恥ずかしさに耐えられず、掘りごたつを出た。
「お風呂入って来ます」
嬉しいのに、私だって柊哉さんをカッコイイと思っているのに、上手く言葉に出来ないし、振舞えない。
「ゆっくり入っておいで」
機嫌の良さそうな柊哉さんの声に送られ、逃げるように部屋を出た。