初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「朝食はルームサービスを頼もう」

「はい」

私は頷き、少し迷ってから彼から見て斜め向かいに位置するソファーに腰かける。

柊哉さんの表情が少しだけ曇った気がしたけれど、それもほんの僅かの間で、彼は先ほどと変わらない声音で言葉を続ける。

「好き嫌いは?」

「特にありません」

「そう。和食と洋食どちらがいい?」

「そうですね……では洋食で」

どちらも好きだけれど、ホテルの雰囲気に洋食が似合っている気がした。

柊哉さんは頷くと備え付けの電話機を手にしオーダーをする。彼も私と同じものを食べるようだ。

「柊哉さんも洋食でいいんですか?」

一緒に食事をしたのはほんの数回。私達はまだお互いの嗜好を分かっていない。

柊哉さんは何が好きなのだろう。食事は私が作るつもりなのに聞いていなかった。

「好き嫌いはないんですか?」

「特にないな」

何でも食べられると思っていい? それなら楽そう。

健康も気になるし家では和食中心にしようかな。と言ってもレパートリーはそれ程無いのだけれど。

頭の中で、あれこれ献立を考える。

しばらくすると、いつのまにか沈黙が続いていることに気が付いた。

柊哉さんはどうしているのだろうと様子を伺うと、彼もこちらを見ていたようで目が合った。

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