初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「昨日、風花から連絡が来た」
その名前を耳にした瞬間、僅かだが動揺を出してしまった。
「何の用だ?」
「手続きの件で。俺は一応上司だったしね。退職したあと音信不通だったから、連絡には驚いたけどしっかり対応しておいたよ」
真田の表情は憂鬱そうに曇っていた。
それは自分も同じで胸に何かつかえたような重苦しさを感じる。
「……彼女は元気なのか?」
「声の感じでは。今は実家に戻っているそうだ」
「そうか」
「桐ケ谷さんに、彼女のことは話してあるのか?」
真田の問いに、ゆっくりと首を横に振った。
「話す必要がないと思ってる。余計な心配はかけたくないからな」
香子には笑顔で居て欲しい。
「そうか。でも場合によっては話した方がいいかもな。他のルートから桐ケ谷さんの耳に入る可能性もゼロじゃないし」
「……検討する」
香子の希望をなるべく叶えて上げたい。
そして幸せそうに笑ってくれたら、自分も幸福な気持ちになる。
だけど今、頭の中に理想とは違う考えが浮かんで来た。
香子を早く退職させて家に閉じ込めておきたい。
そうすれば他の男の目を気にすることもなくなるし、、不要な情報で香子を不安にさせる可能性をなくせるのだから。