初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~

「さあ、頂きましょう」

お母さんの一声で、食事が始まる。

まずは柊哉さんの分を取り分けていると、お父さんが感心したように言った。

「香子も随分気が利くようになったな」

その言い方、今までやってなかったみたいだ。私は少しだけ眉を顰める。

「お父さんのだって取ってあげてたでしょう?」

夕食のときのお父さんはたいてい酔っぱらっているので、きっと覚えていないんだ。

「そうか? まあいいや。柊哉君沢山食べてくれな」

お父さんは柊哉さんには結構気を遣っているようだ。桜川家との関係を思えば当然なんだろうけど。

「ありがとうございます。美味しそうだ」

笑顔の柊哉さんに、お母さんが身を乗り出して言う。

「この肉は桜川さんから頂いたのよ」

「そうなの?」

今度は私が割りこんだ。

「ええそうよ。随分気を遣って頂いて恐縮だわね」

「両家で結構交流しているんだね、知らなった」

むしろ私より桜川家とのやり取りが多いのでは?

「そうだけど前からよ。香子と柊哉さんがお見合いする前から桜川さんとは連絡を取り合っていたし」

「だからお見合い話が一気に進んだんだ……」

それにしてもと、私は首を傾げた。

前からの疑問。桜川家はどうして、うちと交流していたのか。仕事中でメリットはほぼ無いのは確かなのに。
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