クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「私事で恐縮ですが、桑名社長からご報告があったとおり、この度婚約する運びとなったので、ホテルオーナーのご厚意もありこの場をお借りしてお知らせいたします」
まるでなにかの原稿を読み上げているのかと思うほど淡々としたものだった。
さらに桑名社長から今日、彼の婚約者が会場に来ているとの旨を伝えれば、会場は期待と興味の渦が巻き起こる。
亮は壇上を静かに下りると、桑名さんの方に向かって歩き出した。見つめ合うふたりから目を背けたくて私はうつむき、つま先を睨むようにしてなにかに耐える。
それからどれくらい経ったのか。彼らが壇上に上がった気配はまだないし、人々のざわめきも続いている。
「汐里」
「え?」
不意に小声で名前を呼ばれ、反射的に顔を上げれば私の目には信じられない光景が飛び込んできた。どうしてか、さっきまで遠くにいた亮が私の目の前に立っている。
状況が飲み込めずにいる私に亮が不機嫌そうに尋ねてきた。
「まさかこの場で断るのか?」
「え、いや、それは」
なんで? 桑名さんは? それに桑名社長の手前こんなことして大丈夫なの? というより婚約者って……。
「なら、おとなしく手を取れ」
状況が飲み込めずパニックに陥りそうな私に亮が無愛想に催促してくる。周りからの刺さる視線が痛いのは亮も同じなのかもしれない。とはいえ……。
まるでなにかの原稿を読み上げているのかと思うほど淡々としたものだった。
さらに桑名社長から今日、彼の婚約者が会場に来ているとの旨を伝えれば、会場は期待と興味の渦が巻き起こる。
亮は壇上を静かに下りると、桑名さんの方に向かって歩き出した。見つめ合うふたりから目を背けたくて私はうつむき、つま先を睨むようにしてなにかに耐える。
それからどれくらい経ったのか。彼らが壇上に上がった気配はまだないし、人々のざわめきも続いている。
「汐里」
「え?」
不意に小声で名前を呼ばれ、反射的に顔を上げれば私の目には信じられない光景が飛び込んできた。どうしてか、さっきまで遠くにいた亮が私の目の前に立っている。
状況が飲み込めずにいる私に亮が不機嫌そうに尋ねてきた。
「まさかこの場で断るのか?」
「え、いや、それは」
なんで? 桑名さんは? それに桑名社長の手前こんなことして大丈夫なの? というより婚約者って……。
「なら、おとなしく手を取れ」
状況が飲み込めずパニックに陥りそうな私に亮が無愛想に催促してくる。周りからの刺さる視線が痛いのは亮も同じなのかもしれない。とはいえ……。