クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
　亮が離れたのを感じ目を開ければ、彼はどこかばつが悪そうな顔をしていた。

　意味がわからずに、亮を見つめると彼はしばらくなにか迷う素振りを見せ、軽く溜め息をついてから私をソファに座るよう促す。

　そういえばまだ話を聞いていない。おとなしく従い、先に座った亮の左隣に腰を下ろすとそのタイミングで相手が口火を切った。

「今日は、突然悪かった。まさか汐里が来ているとは思わなかったから桑名社長から聞いたときは、驚いたよ」

　やっぱりその話か、と思い私は苦笑して答える。

「うん。黙っていてごめんね。でも私もびっくりしちゃった。私がいなかったらどうしてたの？」

　まさかそのまま桑名さんと婚約発表をしていたわけではないだろうけれど。

　亮曰(いわ)く、桑名社長がホテルのコンセプトに合わせた話題性も兼ねて、亮に冗談交じりで、この際に娘の桑名さんと婚約発表でもしてみればどうかと提案したらしい。

　そこで亮ははっきりとそのつもりはないと改めて自分の意志を桑名社長にしっかりと伝え、私の存在を話していたそうだ。

　そしてパーティーの直前に娘の桑名さんから私を呼んだ旨を伝えられた桑名社長は、少々強引すぎるやり方でホテルオーナーとも話し、今回の件を実行したらしい。

　レストランへの話題性を持たすための演出としてはもちろん、娘に関して亮に無理を言ってきたことへの罪滅ぼしと、亮に熱をあげて暴走気味の桑名さんに諦めさせる意味もあったんだとか。
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