クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 パライバトルマリンの横には小さなダイヤモンドも添えられていた。

 どれくらいの価値があるんだろうと考えると少し怖い。でも私のために用意してくれたんだと思うと、やっぱり嬉しい。

「ありがとう。その、なんていうか、亮はすごいね。私のことよくわかっているというか……」

「いや。だとしたら五年前に別れずにすんだ」

 すかさず否定され、一瞬静寂が走る。

「汐里」

 どう切り返そうか悩んでいると、亮が私の名前を呼んだ。そして改めて自分の指を絡めている私の左手を強く握った。

「同じ過ちは繰り返さない。絶対にもう二度と放さないから、覚悟しておけ」

 迷いなく言い切り、亮は私の左手の甲に唇を寄せる。その光景に目を奪われ、続けて視界が滲みそうになる。

 再び巡り会って、また亮との運命が交錯するとは思いもしなかった。ただ、今になってこそ確信できる。あんな形で別れてしまったけれど、けっして無駄じゃなかった。

 私も彼もお互いに離れて、初めて知ることや改めて気づかされるものもたくさんあった。 だからこれからはなにがあっても大丈夫だって強く思える。

 今度こそ不安なく彼に溺れてもいいんだ。この手が離れないと信じられるし、私も離したりしない。

 胸の奥が熱くなり、私からキスをねだる。彼は虚を衝かれた表情を見せて、すぐに余裕たっぷりの顔になった。

 ゆっくりと顔を近づけられ、私も笑った。心が満たされて泣きそうになる。これから訪れる幸せの始まりを告げるかのように彼からのキスは長く甘いものだった。
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