クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
【番外編】After half asleep
 腕の痺れを感じて目を覚ますと、体のあちこちが痛み眉をひそめる。しかしすぐそばに規則正しい寝息を立てた汐里の横顔があり、心が満たされる。

 何年かぶりに訪れた彼女の部屋はあまり変わっておらず、どこか懐かしくて安心した。「変わっていない」と言うと不機嫌になるのが明確なので口にはしなかったが。

 空いた方の手で汐里の顔にかかっている髪をすくい耳にかけると、彼女の白い肌が露わになる。

 うっすらと開いている無防備な唇に静かに自分の唇を重ねた。すると汐里がわずかに声を漏らしてこちらに身を寄せてきたので、そっと抱きしめる。

 さすがにシングルベッドに大人ふたりが眠るのはキツイ。とはいえこういう流れに持っていったのは他の誰でもない俺自身なので、文句は言えない。

 むしろ今は言い知れない多幸感に包まれていた。愛らしい寝顔に、 衝動的に彼女の閉じられた瞼に口づける。

 そしてひそかに心の中で訂正する。変わっていないところももちろんあるが、会っていない間に汐里はずいぶんと綺麗になった。

 出会ったときの彼女は、まだ二十歳にもなっていなかった。垢抜けないとまでは言わないが、汐里はあまり流行を追うタイプでもなく、高校生と言っても通じる感じだった。

 それが社会人になり髪型や化粧の影響もあるんだろうが、全体的に大人っぽく洗練された雰囲気になった。再会したときもいろいろな意味で目を疑った。

 再び会えると思っていなかった。ましてや、こうして彼女に触れることなど二度と叶わないと思っていたのだから。
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