クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
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 汐里と出会ったのは大学でのゼミだった。俺は家の事情は伏せたままそれなりの大学生活を送り、元々経営やマーケティングなどには興味があったので専門の山寺ゼミに所属していた。

 そこに二学年下として彼女がやってきたのだ。

 ゼミでの汐里はとくに目立ちもせず、学年が違うのもあり印象に残るほど大きな接点はなかった。顔と名前は一致するといったところか。

 そんな彼女と思わぬところで遭遇する。自分の父親が経営する株式会社ズプマリーンコーポレーションが手がけた水族館でだった。

 大学からは一番近く、一応将来的に会社を継ぐ運命であるのを受け入れていた俺は、卒論の関係もあってここによく出入りしていた。

『ひとりで水族館を楽しんでいる常連の若い女の子がいる』

 だいたい誰かと訪れたり、土日に客入りが多い中、汐里の存在はスタッフの間で話題になっていた。

 何度も通ってもらえているなら経営者側としては有難い。それが年頃の女性だというのだから尚更注意も引いた。

 物好きな……と思いつつ好奇心でどんな人物なのかと遠目から窺ってみる。するとまるで自宅でくつろぐかのように穏やかな顔で水槽を眺めている女性がいた。

 白い頬が水槽の明かりを反射してキラキラと輝いている。その姿に息を呑み、さらには相手が思いがけず見知った人物だったので、俺は彼女に近づいて声をかけた。
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