クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「谷川さん?」
「……冴木先輩」
大きな瞳をまん丸くしてこちらを見たのは同じゼミの谷川汐里だった。そして、純粋に水族館が好きだと屈託のない笑顔で話す彼女にどうしてか、苛立ちを感じてしまった。
「いや、むしろ水族館とか好きじゃない。人間のエゴだろ、こんなもの」
いつもなら上手く立ち回るのにどうしてかこのときは本音が漏れた。彼女の純朴そうな雰囲気がそうさせたのかもしれない。
ゼミでグループワークをするときも、どちらかといえば汐里は聞き役で控えめな印象だった。だから今も反応に困っている。好きなものを否定され、ショックを受けているのか。
「それだけじゃないと思います!」
ところが、汐里は予想外にもきっぱりと反論してきた。続けてたどたどしくも自分の意見をはっきりと口にする。
「可哀相だって憐れむ方がよっぽどエゴじゃないです?」
最終的にはさらりと切り返され、俺は吹き出しそうになった。まったくその通りだったからだ。
水族館なんてただの経済効果を生む娯楽施設に過ぎない。あまりよく思っていなかった父親の事業に対して、どうやら俺は傲慢にも高い位置で見下したつもりになっていたようだ。
その中にある本質を見ようともしないで。まさかそれを彼女に気づかされるとは。
このときから、ただの同じゼミの後輩としてしか見ていなかった汐里に興味を抱くようになった。
「……冴木先輩」
大きな瞳をまん丸くしてこちらを見たのは同じゼミの谷川汐里だった。そして、純粋に水族館が好きだと屈託のない笑顔で話す彼女にどうしてか、苛立ちを感じてしまった。
「いや、むしろ水族館とか好きじゃない。人間のエゴだろ、こんなもの」
いつもなら上手く立ち回るのにどうしてかこのときは本音が漏れた。彼女の純朴そうな雰囲気がそうさせたのかもしれない。
ゼミでグループワークをするときも、どちらかといえば汐里は聞き役で控えめな印象だった。だから今も反応に困っている。好きなものを否定され、ショックを受けているのか。
「それだけじゃないと思います!」
ところが、汐里は予想外にもきっぱりと反論してきた。続けてたどたどしくも自分の意見をはっきりと口にする。
「可哀相だって憐れむ方がよっぽどエゴじゃないです?」
最終的にはさらりと切り返され、俺は吹き出しそうになった。まったくその通りだったからだ。
水族館なんてただの経済効果を生む娯楽施設に過ぎない。あまりよく思っていなかった父親の事業に対して、どうやら俺は傲慢にも高い位置で見下したつもりになっていたようだ。
その中にある本質を見ようともしないで。まさかそれを彼女に気づかされるとは。
このときから、ただの同じゼミの後輩としてしか見ていなかった汐里に興味を抱くようになった。