クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
いつもよりネクタイの柄も遊び心があって、明るめの茶髪にカジュアルすぎないスーツ姿はパーティーにもぴったりだ。
「出て行くのが見えたから。もう帰るの? この後、なんか用事?」
矢継ぎ早の質問に私は苦笑する。
「ごめん、ちょっと体調があまりよくなくて……。今日はもう帰るね」
「送ろうか?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
心配してくれるのは有難いが、正直今は彼の相手をするのも億劫だ。早く解放して欲しいと願っていると岡元くんから別の話題を振られる。
「あのさ、この前の返事ってやっぱり変わらない?」
私は顔を強張らせる。その話はもう終わったと思っていたのに。黙っている私に岡元くんは続ける。
「牧野から聞いたんだ。谷川さんって昔の恋愛がトラウマで誰とも付き合わないって本当?」
思わず目を見開いて私は固まった。牧野香織は私の同期で仲が良く、さらに彼女は私よりも岡元くんと親しげだった。
元々男女隔たりなく友人の多い香織だ。岡元くんがあれこれ私の件を香織に相談しているのも実は知っていた。
そのうえで香織は私の事情を話したらしい。香織はきっと気を利かせたんだ。
『いつまでも、過去の恋愛を引きずってないでさっさと前に進みなよ。岡元はいい奴だと思うよ?』
岡元くんに告白されたのはちょうど一週間前。金曜日の仕事終わりだった。私の返答は考える間もなく『ノー』だった。彼が嫌いだとかそういう話じゃない。
社会人になって、誰とも恋愛しない私を香織なりに心配していた。私だっていい加減前に進まないと、とは思っている。でも……。
「出て行くのが見えたから。もう帰るの? この後、なんか用事?」
矢継ぎ早の質問に私は苦笑する。
「ごめん、ちょっと体調があまりよくなくて……。今日はもう帰るね」
「送ろうか?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
心配してくれるのは有難いが、正直今は彼の相手をするのも億劫だ。早く解放して欲しいと願っていると岡元くんから別の話題を振られる。
「あのさ、この前の返事ってやっぱり変わらない?」
私は顔を強張らせる。その話はもう終わったと思っていたのに。黙っている私に岡元くんは続ける。
「牧野から聞いたんだ。谷川さんって昔の恋愛がトラウマで誰とも付き合わないって本当?」
思わず目を見開いて私は固まった。牧野香織は私の同期で仲が良く、さらに彼女は私よりも岡元くんと親しげだった。
元々男女隔たりなく友人の多い香織だ。岡元くんがあれこれ私の件を香織に相談しているのも実は知っていた。
そのうえで香織は私の事情を話したらしい。香織はきっと気を利かせたんだ。
『いつまでも、過去の恋愛を引きずってないでさっさと前に進みなよ。岡元はいい奴だと思うよ?』
岡元くんに告白されたのはちょうど一週間前。金曜日の仕事終わりだった。私の返答は考える間もなく『ノー』だった。彼が嫌いだとかそういう話じゃない。
社会人になって、誰とも恋愛しない私を香織なりに心配していた。私だっていい加減前に進まないと、とは思っている。でも……。