クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 やめた方がいい。彼とは違う世界の人間だって別れるときに散々、思い知った。再会してからも、それを節々に感じる。

 もうあの頃みたいに、純粋にお互いの気持ちだけで付き合うには私たちは大人になりすぎている。きっとまた傷つく。

 わかっているのに――

「私も亮が忘れられなくて……苦しくて。ずっと会いたかった」

 声を震わせて必死に言葉を紡ぐ。どこまで言っていいのかわからない。ただ、私のずっと抱えてきた本当の気持ちだった。

 心臓が壊れそうに激しく脈打ち、緊張で口の中が渇く。亮の反応を窺う前に、彼の腕の中に閉じ込められた。

「それはイエスって受け取っても?」

「っ、知らない」

 心なしか嬉しそうなのが伝わってきて、私は照れもあってつい素っ気ない態度を取った。そんな私に亮は怒りもせず、優しく頭を撫でる。

 懐かしいのと同時に新鮮な気持ちもあって、どうも実感が湧かない。ふと亮と目が合うと、彼は穏やかに微笑んだ。

「好きだよ」

 さらりと告げられ、額にキスが落とされる。私は動揺が隠せない。彼に面と向かって好きだと言われたのは、付き合っていたときでさえなかったから。

 あの頃より亮はずっと大人びていて、スーツもよく似合っている。抱えているものもより多くなって、変わったところがたくさんあるのも当然だ。

 少しだけ胸が痛むのはどうしてだろう。淡い不安が拭えないまま私はしばらく亮の温もりに包まれていた。
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