クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 看板に偽りなしと褒めちぎりたいほど、非常灯がほんのりと点いているだけの部屋でダークナイトコーナーは開催されていた。

 ほぼ真っ暗で、普段はよく見えるようにと中を照らされている水槽も今は周りが暗いのもあり、ほんの少しの明かりでとてもよく目立っている。

 昼間見るのとはまったく違う。お世辞にも可愛らしいとは形容できない不気味な色をした深海生物を私はじっくり見ていた。

 ゆったりと動く魚に視線を走らせる。あまりこのコーナーは人気がないのか、人がまばらだ。

 まぁ、せっかくならもっと大きな水槽だったり、わかりやすい生き物を見ようと思うかな。

 頭の中で分析し、私は足元のわずかな明かりを頼りに備え付けのソファに腰掛けた。亮は今、再び電話があって席をはずしている。

 夕飯はバーも兼ねたカジュアルなイタリアンレストランを訪れ、前菜にカプレーゼやカルパッチョなどを選び、メインは熱々のラザニアにした。

 お肉たっぷりのミートソースとホワイトソースの組み合わせが絶妙で、美味しいと目を輝かせつつ使っているチーズの種類はなんだろうと考察する私に『そんなに気に入ったなら、今度はゆっくりコース料理を堪能しに来よう』と亮は提案した。

 亮は私の好みや性格をしっかり把握していて、いつも抜け目ない。そういう洞察力は昔からすごくて、彼の人脈の広さや人望の厚さに繋がっているんだと思う。

 今も会社の後継者として大きな事業を成し遂げようとしているし。

 亮は、本当にすごい人なんだな。

 ぼんやりと水槽を眺めていると、隣に気配を感じた。
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