PTSDユートピア
説明が終わると、プロフィールやフォロー数が表示されたトップページへ移った。


『これ……どう見ても普通のSNSですよね』


僕が感じた疑問をそのまま送る。


『唯一分かったのは、『ユートピアート』の由来が『ユートピア+アート』だ、ってことくらいでしょうか。理想郷とか、創り出すって言葉から想像する限りでは』


僕なりに知恵を働かせたつもりだったが……以外にも『N』の方がその上を行っていた。


『私も最初はそんな感想でした。でも、このアプリにしかない仕様もあるみたいです』


どうやら、『N』の方が一足早く登録を済ませて色々調べてくれていたようだ。


『例えばこのサイトは特定の権利者が発行できるURLからしか登録できないみたいです。なので恐らくまだここには私たちしかいません』


『特定の権利者……ケニー先生か』


『他にもライブ配信機能、録音機能、執筆機能、ペンタブ機能、長時間の動画投稿機能など他のSNSにはない機能がデフォルトで揃っています。正直言ってかなりのオーバテクノロジーです』


『本当だ……うわ、アプリのカメラに最初から本格的な加工ソフトが入ってる!』


『録音機能にはミキシングソフトまで付いています。これを使えばこのアプリだけで歌の録音、編集、投稿まで出来ますよ!』


『あの……もしかして歌うのが趣味なんですか?』


『N』の突然の食いつきぶりに気になって尋ねると、


『いえ、別にそんなことは……って、今はそんな話はどうでもいいです!』


『す、すみません。つい気になって』


話を脱線させてしまったことを謝る。

少し気まずい沈黙続く。僕と『N』はケニー先生によって仕組まれた特別な糸で繋がれているだけで、あくまで赤の他人同士だ。

そんな相手の趣味嗜好まで探るのは少々不躾だったし……そもそも僕は『N』に興味などない。

引き際だと感じた僕は再び文字を打った。


『とりあえず今日はここで終わりにしませんか? またケニー先生から指示があるかもしれませんし』


『そうですね。では明日、また同じ時間に連絡してもいいですか』


『ええ、大丈夫ですよ』


『ではまた明日よろしくお願いします』


形式的な会話だけ交わすと、僕は『N』とのファーストコンタクトを終えて眠りについた。
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