PTSDユートピア
「雨宮君?」



なんだよ、これ。

彼女たちの顔を思い出した瞬間……僕は立ち眩みを起こして思わずしゃがみ込んだ。

「雨宮君⁉ どうしたの、具合が悪いなら戻って病院に――」

「綾瀬……神崎さん……秋人……ごめん……」



涙が頬を伝って雪に落ちて、すぐに凍り付いた。

「僕は幸せになる資格なんてないのに……僕は許されてはいけない存在なのに……誰かにこんな感情を抱く権利なんて……!」



世界の全てがぼやけて、冷え固まっていく。

暗闇の中で三人の顔が朧げに浮かんだ。



許されていいはずがない。

許されていいはずがない。

許されていいはずがないのだ。



「僕はエゴイストだ。あんな作品に、活動に何の価値もない」



嗚咽を漏らす僕を、冬峰さんは黙って見降ろしていた。

やがて彼女も隣でしゃがみ込むと――



不意に、唇に温かくて柔らかい感触が走った。
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