PTSDユートピア
決着編
予兆
――十六カ月後――
春の日差しが差し込む朝。
スマホの通知音で目を覚ました僕は、すぐユートピアートを起動した。
通知の内容は、僕の去年書いた小説が年間ランキング一位を達成したというものだった。
すでに僕はユートピアート内のノベル掲示板でいくつもの記録を出し、ネット小説サイトのスカウトを受けて新人作家として活動している。
今までにない新記録に、フォロワーと活動者から数えきれないほどのお祝いメッセージが届いていた。
僕はその一つ一つに丁寧な返事を返しながら、ふと彼女のことを思う。
無駄だと知りつつリプ欄を探してみるも、あの盲目の少女からのメッセージは無い。
分かっていても、僕はここにある何百と言う祝福より彼女の一言を求めてしまう。
彼女……冬峰奈波とはもうあの雪の降る夜以来会っていなかった。
目を覚ました時には病院のベッドに横たわっていて、彼女はどこにもいなかった。電話にも出なかった。
幸い怪我自体は大したことはなかったが、雪の中に倒れたせいかその後数日間熱で寝込んでしまった。
数日後彼女の家を訪れると、冬峰家はもう引っ越してしまっていた。
噂によると、急遽転校先の学校が決まったのでその近くに移ったのだという。
そして――ユートピアート上の彼女のアカウントも抹消されていた。
それっきり、どれほど必死に調べても彼女の消息は分かっていない。
彼女は今どこで何をしているのか……必死に忘れようとしても、あの美しい歌声は今でも耳に残って離れてくれない。
風に乗って運ばれてきた桜の花びらが掌に落ちて、僕はふと我に返る。
これ以上引きずるわけにかいかない。
全ては過ぎ去ったこと。終わってしまったこと。
そろそろもう、完全にそう割り切らなけばいけない時期だ。
何しろ僕は、今日から高校生なのだから。
僕は真新しいブレザーの制服に着替えると、鞄を持って家を出る。
今日が僕の再スタート――雨宮勇樹の、新しい生活が始まる日だ。
春の日差しが差し込む朝。
スマホの通知音で目を覚ました僕は、すぐユートピアートを起動した。
通知の内容は、僕の去年書いた小説が年間ランキング一位を達成したというものだった。
すでに僕はユートピアート内のノベル掲示板でいくつもの記録を出し、ネット小説サイトのスカウトを受けて新人作家として活動している。
今までにない新記録に、フォロワーと活動者から数えきれないほどのお祝いメッセージが届いていた。
僕はその一つ一つに丁寧な返事を返しながら、ふと彼女のことを思う。
無駄だと知りつつリプ欄を探してみるも、あの盲目の少女からのメッセージは無い。
分かっていても、僕はここにある何百と言う祝福より彼女の一言を求めてしまう。
彼女……冬峰奈波とはもうあの雪の降る夜以来会っていなかった。
目を覚ました時には病院のベッドに横たわっていて、彼女はどこにもいなかった。電話にも出なかった。
幸い怪我自体は大したことはなかったが、雪の中に倒れたせいかその後数日間熱で寝込んでしまった。
数日後彼女の家を訪れると、冬峰家はもう引っ越してしまっていた。
噂によると、急遽転校先の学校が決まったのでその近くに移ったのだという。
そして――ユートピアート上の彼女のアカウントも抹消されていた。
それっきり、どれほど必死に調べても彼女の消息は分かっていない。
彼女は今どこで何をしているのか……必死に忘れようとしても、あの美しい歌声は今でも耳に残って離れてくれない。
風に乗って運ばれてきた桜の花びらが掌に落ちて、僕はふと我に返る。
これ以上引きずるわけにかいかない。
全ては過ぎ去ったこと。終わってしまったこと。
そろそろもう、完全にそう割り切らなけばいけない時期だ。
何しろ僕は、今日から高校生なのだから。
僕は真新しいブレザーの制服に着替えると、鞄を持って家を出る。
今日が僕の再スタート――雨宮勇樹の、新しい生活が始まる日だ。