trick or treat ?
営業一課の部署には、私と森島先輩の2人きりになった。

めっちゃ緊張する。

何故ならば、普段は誰とでも気さくに話す私だけど、森島先輩だけには仕事で必要な会話以外、話をした事がないからだ。

先輩を前にすると、急に乙女心が現れ頭が真っ白になって上手く話が出来ない。剣ちゃんとかっしーにもこの事は相談していた。

「柚木さん悪いね。本当は今日予定あったんでしょう?」

「あっはい…いいえ、大丈夫です。剣ちゃ、いえ…剣崎君達と飲みに行くだけでしたから…。」

はいって言ったりいいえって言ったり、どっちだよ私。緊張して上手く話せない自分に、1人心の中で突っ込む。

「…ふーん。」

そして、黙々と仕事を始める。先輩と一緒は嬉しいけど、何を話したらいいの…。いつも剣ちゃん達とどんな話をしてたっけ?

あぁ…思い出せない。

私はポケットから朝貰った飴を取り出し、レモン味の飴を口に入れる。

結局沈黙のまま、残業は終わった。

せっかくのチャンスだったのに…

「お疲れ様。良かったらどうぞ。」

そう言って森島先輩は缶コーヒーを私に渡す。

「あ、ありがとうございます。」

「柚木さんさ、俺の事苦手でしょ?」

森島先輩は笑みを浮かべて、サラッと聞いてきた。

「苦手だなんて、そんな事ないです。」

私は慌てて否定する。何でそんな風に思ったんだろう。

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