trick or treat ?
「でも、他の人には気さくに話しかけるのに、俺の事は避けてるよね。余程嫌われているか、または…その逆とか?」

「そ、それは…。」

それは先輩の事を意識しすぎて気軽に話が出来ないんです…なんて言えないし。

「俺は柚木さんと話してみたいなって思ってるんだけどな。」

「え?」

森島先輩が私に近づいてくる。

「レモンの匂いがするね。」

「今、レモン味の飴を舐めてて…。」

「そう…trick or treat?」

「えっ?」

trick or treat…お菓子をくれなきゃイタズラするぞ?

森島先輩の言葉(セリフ)にどうして良いか分からず、困った顔をしていると、森島先輩はまた笑みを浮かべて私に顔を近づけてきた。

それ以上顔を近づけちゃうと…森島先輩の唇が私の唇に触れた。

私、森島先輩とキスしてる?

少しの間キスをして、それから先輩の舌が私の口の中に入ってきた。私は気持ち良すぎて思わず声が出そうになる。

「…お菓子ありがとう。」

唇が離れると、森島先輩は私の耳元で(ささや)き、飴をチラッと見せてきた。

あっ、私の口の中にあったはずの飴がない!?舌を入れてきたのは、飴を取るためか。

私は何が起きたのか分からず、思考停止したまま赤面する。

「この後飲みにでもって思ったけど、柚木さんって気持ちは10代って言ってたからお酒飲みに誘うの辞めとくね。あと、飴貰ったからイタズラも辞めとく。」

Sっ気たっぷりのその笑顔は何ですか!?
朝の会話聞いてたんですか!?
私が森島先輩の事好きなの…バレてないですよね!?

「じゃあ、またね。」

森島先輩は笑顔のまま私に手を振り、先に帰ってしまった。

1人になった私は、腰が抜けたかのようにそのまま床に座り込んだ。

私が知ってる森島先輩とは違う一面を見た。これが()なのかな。

そんな森島先輩の事…余計好きになっちゃうじゃないですか。

私は居なくなった先輩の方を見て呟いた。

「Happy Halloween…。」

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