幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
「ねぇ、あなた……それ、フリ?」
「え?」
何を言われたのかわからなくて桐本先生に聞き返すと、
「あの健一郎と結婚してて、そういうことに免疫ないわけないでしょ?」
と桐本先生は続けた。
「……あの、って……」
「だって健一郎だって、一緒じゃない」
「一緒って……」
分からないながらも、胸がドクドクと脈打っていた。
そんな言葉を聞いている間も、藤森先生と森下先生はもめている。
「お前のせいで三波ちゃんが完全に誤解してるだろ!」と藤森先生が叫んだ。
「誤解じゃないですよ。まったく、こんなのが一人いるから、世の中の医者が私生活だらしないとか、乱れてるとか言われるんですよ。ほかの大多数は、清廉潔白なのに! 三波ちゃんも本当に気をつけて!」
「大丈夫だよ。さすがに、俺は親友の奥さんに手なんて出さない。むしろ、俺が親友の奥さんに手を出すように見える?」
私のほうを向いて、藤森先生が言う。
(お願いだから、私にそういうことを聞かないでほしい)
というか、健一郎と藤森先生って親友だったんだ。これもまた、知らなかった。
「健一郎と親友だったんですね?」
「俺と健一郎と桃子でよくつるんでたんだ」
そう言われて、最初に『昔からよく三波ちゃんの話聞いてた』と言われたことを思い出した。
(健一郎からか……それならまぁ、よくないけどいいか……)
そんなことを考えてると、次は桐本先生が口を開いた。
「あの頃から優斗はもうすっごくモテてたよね。遊んでたし。それ以上に健一郎もモテてたけど」
「桃子も好き放題遊んでただろ。で、結局、健一郎なんだもんな」
「仕方ないでしょ。健一郎以上の人、後にも先にも出会わなかった」
その言葉にドキリとする。桐本先生は真顔でこちらを向くと、
「ごめんなさい。でも、本当にそうだから」
とはっきりと言った。「私、今も、健一郎は地域の総合病院の病院長に収まるだけの男だと思ってないわ。結婚は不運ね」