幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
「桐本先生に会っていたんでしょ?」
私が思わず先に口を開くと、健一郎は本当に申し訳なさそうに頭を下げる。
「すみません。藤森が勝手にセッティングしてて、少し話しましたが、すぐに帰ってきました。すぐにでも三波さんに会いたくなって」
健一郎の顔をまっすぐ見ると、その顔は嘘は言っていないようだった。
「……すぐにでもって……いつも一緒じゃない」
そう返して、先ほどの健一郎の言葉にほっとしている自分がいる。それから、よくよく考えて眉を寄せた。
(そもそも、なんでこんなストーカー男の一挙一動で私が振り回されなきゃいけないのよ……!)
そう思うと、イライラが募ってきた。
最近ずっとこうだ。健一郎のせいで、私は変だ。普段の健一郎よりずっと……。
そんな私の顔を見て、健一郎が嬉しそうな顔をして言う。
「昨日、桐本先生にも会ったんですか?」
「森下先生と一緒に……あ、藤森先生も」
「本当は三波さんを藤森には会わせたくなかったんですけど……。だから不用意に病棟のほうに来てほしくなかったんです」
「……でも、健一郎の親友でしょう?」
「誰がそんなこと言いました?」
「藤森先生」
私が言うと、健一郎は心底心配そうに息を吐いた。
「……三波さん、僕は心配です。そんなことではよからぬ輩に騙されますよ」
「ちょっと、なにそれ。失礼ね。大丈夫よ!」
私が怒ると、健一郎は苦笑して私の髪を撫でる。
そして目を細めると、
「先ほど二人と話してて……。桐本先生とのことで、三波さんがヤキモチ焼いてくれたと知って、すごく嬉しくなりました」
ととんでもないことを言い出す。
「や、ヤキモチ⁉ ち、ちがうわよ! ヤキモチなんてやいてない!」
私が怒っても、健一郎はまた嬉しそうな目で私を見ている。
そして、次は私の頬を撫でた。
「今日はあなたがそうやって、いつもより素直で感情がわかりやすいから……思い出しましたよ、昔のこと」
そして続ける。「僕が昔、あなたにあこがれて、恋をした日のことです」