幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
そして、次の休みの日。
私は健一郎とともに、私の実家に呼び出されていた。
健一郎まで一緒に呼ぶなんて何かと思ったが、警察まででてきたこともあり、私が襲われそうになった事件が父母の耳にも入ったらしい。
「ありがとう! 健一郎くん! 聞いたよ!」
家に入るなり、父が健一郎の手を取る。がしっと手を掴まれた健一郎は嬉しそうに笑う。
母はというと、うっとりした顔で、健一郎を見つめ、
「やっぱりママ、健くんがいいと思ってたのよー。健くんなら安心だわ」
と言い出した。
(いや、ちょっと待て! 健一郎は、ただ、番犬のように私を守っただけだぞ!)
決して、そんなドラマチックないいものではない。
ただ、父と母の中では、私の相手は健一郎ということで話が進んでいた。
健一郎が結婚相手の候補になるなんて、考えただけでも、吐きそうだ。うっぷ……。
いや、吐いてる場合じゃない。冗談じゃない! とばかりに、私は机をたたいた。両親はびっくりしたように、こちらを見ていた。
そんな両親に、私はできるだけ低い声で問う。
「……お見合いの話は? 他にも私の相手の候補はたくさんいるわよね?」
(えぇ、その中から選んでやろうじゃないの。この場で!)
私は鼻息荒く、母を見る。
「えぇ、もちろんいるわよ。たくさん。この中ならだれでもいいのだけど」
母は私に20枚ものお見合い写真を渡す。というか20人もよく集めたな……。
同じような顔も多いし、このまま神経衰弱でもできそうだ。あぁ、仕方ない。くじ引きで決めようかしら。
そんな私を見て、母はにこりと笑って、最後の手段とでもいうように、
「健くんとなら、大学に残ってもいいわよ。いま、健くん、大きな研究しているみたいじゃない」
と言う。父までそれに乗っかって、
「あぁ、本橋に聞いたよ。科研費だけじゃなくて総務省経費もついてるって?」
「すごいわねぇ」
健一郎のすごさなんて、わかりたくもない。
(お願いだからやめてくれ!)
私はぎり、と唇をかむ。
私の両親はとてもやさしいが、勝手に話を進めようとするきらいがあるのだ。
どうしても、健一郎との結婚を勧めたいのが、透けて見える。
でも、私は、誰でもいいと言いながら、健一郎だけはその対象として考えたことは無いし、今後も考える予定はないのだ。