幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
「み、み、三波さん!」
慌てる健一郎の声が頭上から降ってくる。
私は、健一郎の胸に顔をうずめた。そうしていると健一郎の心臓の音が耳に心地よく響いてきた。
「健一郎の心臓の音、すっごいバクバク言ってる」
「こんなことされれば誰だってそうなります!」
健一郎の慌てたような声に思わず笑う。
昨日はなんだかんだ健一郎に全部リードされて、翻弄されて、これまでにないほどドキドキさせられた。
だからこそ、やっぱり健一郎はこういうときの方が私は慣れているし、かわいいとまで思ってしまう。
今思っても、健一郎ってやっぱり犬っぽいよなぁ。あ、昔飼ってた犬だ。あの子に似てる気がする。
グレート・ピレニーズという白い大型犬で『ケン』といった。
あれ、名前まで似てる…。
(っていうかその名前って私がつけたような……?)
健一郎が好きだったから健一郎ってつけようとしたら、両親にそれはさすがに……と止められ、結局『ケン』と言うことに落ち着いたのだ。
なんで忘れていたのだろう。やっぱり都合の悪い記憶は私の中から抹消されているらしい。
それに気づいて、また笑ってしまった。