幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

「私は嫌だって!」

 思わず叫ぶ。

(健一郎と結婚? 冗談じゃない!)

 なのに健一郎は、なだめるように私に言う。

「三波さんは、大学に残りたいでしょ」
「それは、もちろんそうだけど」
「僕は三波さんがいいというまで絶対に手を出しません。とりあえず入籍するっていうのは、どうですか? そうすれば三波さんのご両親も納得されるでしょう」

 健一郎まで何を言い出したんだ……。
 両親の言葉に、どうやら健一郎も踊らされているらしい。

(これは、私が止めないと!)

 健一郎は今までもおかしな奴だったが、この手の冗談は言わない奴だった。
 健一郎、ストーカーのしすぎで寝不足になっておかしくなってるんじゃないの?

 私は息を吸い込むと、

「そんなの嫌に決まってるでしょう! 私は健一郎のこと、ただのストーカーで幼馴染としか思ってないのよ。そんな人と結婚するなんて無理!」
と一刀両断する。

 どうだ、と健一郎を見ると、健一郎は手を顎に当て、んー…と考える。そして、

「でもあなたは、これから、全然知らない肩書だけできまった誰かと結婚しようとしているのでしょう? 僕よりもっとあなたが無理だと思うような人物かもしれませんよ」
と言い出した。

「……それは」

 確かにそれはそうだ、と言葉が出かける。
 私は20枚ものお見合い写真に目を落とした。

 確かに、健一郎が言うとおり……。
 私は、この中から医者と言うだけで、あとは肩書や、少しでも顔が苦手ではない人を選んで結婚しようとしている。なんなら、先ほどなどはくじ引きで決めようとしていた。

 でも、変な性癖の持ち主かもしれないのよね。健一郎よりもっともっとキモチワルイ人間かもしれないのよね? あの捕まったストーカーのような…。

 こればかりはお見合い写真からはわからないのは事実だ。
 今、健一郎が言っていることはあまりにも的を得ていて、私は言葉に詰まった。
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