幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
23章:壁ドンはキュンとするもの?
私が後悔を抱えつつ仕事を始めると、本橋教授が隣で嬉しそうに笑って私を見ていて、またさらに私は気まずい思いをした。
「もう忘れてください……」
「いいじゃない。仲よさそうで安心した」
「……お願いだから忘れてくださいってぇえええ!」
そんな私たちの様子に、研究室に入ってきた森下先生が、
「え、なんですか? 仲よさそうって聞こえましたけど」
「なんでもないです! 本橋教授! 何かお手伝いできることはありますか!」
私がガタンと立ち上がると、本橋教授は少し考え、そういえば、と資料を一式私に渡した。
「これ、外科の藤森先生に届けてくれる? 今日の委員会の資料送ったんだけど、メールの調子が悪いらしくてさ。届けてほしいってさ」
「メールの調子が悪い?」
朝から私の調子とは裏腹に、メールの調子はすこぶるいい。快調に仕事のメールがバンバンと飛び込んできていた。
学内は同じネットワークだし、藤森先生のことだから変な電波でも出てるんじゃないの、なんて心の中で悪態をつく。それくらい、藤森先生の印象は私の中でよくなかったというわけだ。
「藤森先生……? あんな先生のとこに一人じゃ危なくないですか?」
ピクリと森下先生の眉が不快そうに動く。あまりに辛辣な物言いに、私ですらドキリとした。
(ほんと藤森先生、どれだけ森下先生に嫌われてるんですか……!)
「だ、大丈夫ですよ、さすがに」
「なにか問題あるかな?」
本橋教授はきょとんとしている。どうやら本橋教授は藤森先生のあれやこれやは知らないらしい。
「私も一緒に行くわ……」
「森下先生は、次も講義でしょう」
「そうだった……」
がっくりうなだれる森下先生に、大丈夫ですよ、と苦笑して、私は部屋を出た。