幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
私は、慌ててすぐにお辞儀をし、
「失礼します」というと踵を返す。
その瞬間、藤森先生は、そうだ! と言って、また私の腕をつかんだ。
「お願いがあるんだ」
「お願いって……なんですか」
私は眉を寄せて藤森先生のほうを見た。
(何か碌なお願いではないような気がする……)
「となりの資料室の棚の隙間に、本を落としてしまって」
藤森先生はにこりとそう言った。「三波ちゃんなら、腕が細くて長いからとれるんじゃないかって思って」
その言葉に眉を寄せる。
「そんなの、マジックハンドでもなんでもとればいいんじゃないですか」
「ないんだって」
「高枝切りばさみとか」
「ないし、本きれちゃうし」
「……仕方ないですね」
私はため息をついた。
そして、ふと藤森先生の腕を見る。
(藤森先生の腕……私より細くて長くない? 外科だから手は使いたくないとかだろうか?)
面倒だし、とにかく、さっさと終わらせて帰ろう。
私はそう思って、資料室に藤森先生と一緒に行くことにした。