幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

 そう決意して身構えた私を見て藤森先生は苦笑する。

「なんか意味わかってなさそうだよね」

 そう言って頬をするりと撫でられた。その仕草に嫌悪感が走って、その手を叩いて跳ねのける。
 藤森先生は少し驚いた顔をすると、嬉しそうに笑った。

「そういう反応、なかなか新鮮だなぁ。健一郎にも言わないから。キスくらいはいいでしょ」
「気持ち悪いです」
「き、気持ち悪いって……」
「私、藤森先生みたいな人、気持ち悪くて無理です」

 はっきり言うと、藤森先生は少し考え、私の顔の横の壁に手をつく。いわゆる壁ドンだ。
そして、突然顔を近づけてきた。私は瞬発的に、拳を握り締め、先生の頬を殴っていた。

「ぶっ!」

(あ、端正な顔にしっかり命中してしまった……!)

 でも悪いのは藤森先生だ。
 まったく反省していない私はさらにもう一発、と拳を出す。すると、藤森先生は慌てたように、

「ちょ、ちょっと待ってよ。パーで叩かれたことあるけど、グーで殴ることある⁉ 女の子でしょ!」
「女とか男とか関係ないですけど」
「どうして。誰にも言わないよ? キスくらいでだめなの?」

(だめに決まっているだろうが!)
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