幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
「僕ならどんな人間かは、三波さんもある程度分かってますし……。それに、僕があなたに直接何かしたこと、本当にありました?」
健一郎が真面目な顔で問う。
私はこれまでの健一郎のストーカーぶりを振り返る。
健一郎が直接私に何かしたこと……。
(……確かにない)
そう。健一郎は、私が嫌そうな顔をすると、絶対に私に触れることはなかった。忠犬のように、そこは固く守られていたのだ。
「健一郎。絶対、私に変なこと、しないんでしょうね」
「あなたが嫌だというなら指一本触れません。誓います」
これから結婚するのに、『指一本触れない』という約束ってどうなの。
とも思いながら、なかなかどうして、私は健一郎とのことを考え始めていたのだ。
別に健一郎の意見に賛成したわけじゃない。
ここ最近、健一郎のことを気持ち悪いと思うことも「多少」減ってきていて、むしろ慣れたくないけど慣れてきているのかもしれないと思い始めている自分もいたのだ。
そして、健一郎の言う通り、全然知らない変な人と結婚するよりは、その変さを把握している健一郎のほうがましかもしれない……と考えた。
健一郎の気持ち悪さなら、嫌と言うほど分かってる……。