幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
「で? なぜ、二人が一緒にいるんですか? 三波さんには不用意に病棟に来ないように約束してもらっていたはずですが」
健一郎が私に言った言葉にもトゲを感じて、私は健一郎の顔を見た。
(やっぱり、間違いなく怒ってる……! そう言えばそんな約束したけど……!)
でも今回は上司からの命令。不可抗力と言えよう。
「今日は、届け物してもらったんだ」
藤森先生は怒っている健一郎の様子をものともせず、飄々と答える。
私が言い訳するのも変な話だが、つい、
「えええと、メールの調子が悪かったみたいで」と言っていた。
まるで私が藤森先生のフォローをしているようで、腑に落ちない。なにを取り繕うようなこと言ってんだ、私は……。
それでも今、そうしてしまうほど、健一郎の雰囲気が怖い!
健一郎は、私を見てにこりとすると、
「メールの調子? すこぶるよかったですよ」と言う。
(知ってるよ! 私のメールも調子よかったもん。でも上司命令なら、断れないじゃん!)
私は心の中でやけに慌てる。
その原因は、やはり健一郎の見たことないようなこの笑顔だ。いつものへらへらした笑顔じゃない。怖い笑顔だ。
健一郎の顔を見上げると、健一郎はまたにこりと笑った。
(オーラが黒い! だーかーら! なんで、そんな怒ってるみたいな笑顔なの⁉)
すごく威圧的な健一郎の笑顔に押されて、思わず足を引く。
私は真実を言っているだけなのに、なぜか悪いことをしている気分になる。警察でやってもいない罪を吐かされそうな気分だ……。
健一郎から目をそらすと、健一郎は、次は藤森先生を見て、
「藤森? くわしく聞かせてくれる? 何したら、頬を殴られるようなことになるの?」
「あ、呼ばれた。話はあとでゆっくり」
なのに、藤森先生は、鳴ったのか鳴っていないのか……よくわからない院内携帯に反応してその場を去った。
(藤森先生! 今、本当に鳴った!?)