幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

「三波さん、どうしてそう昔から手が早いのでしょうね」

 なによ、私がよく暴力ふるうみたいに言わないでよ。
 昔は多少元気だっただろうけど、今は、そうでもない。人を殴ったのは、大人になってから今日まで一度もないはずだ。

 健一郎は、真剣な表情で私のほうをじっと見ると、
「でもね、男が本気出したら、力ではかないませんよ。小学生の時とは違うんです」
と言う。

「大丈夫よ。そんなの、わかってる」
「わかってませんよ」

 そう言ったと思ったら、健一郎は突然そこでキスをした。何度も角度を変え、すべてを奪おうとするようなそんなキス。
 健一郎を押してみても、健一郎は全く動く様子もない。手がするりと背中に入って、私は思わず暴れたけど、健一郎はそのまま背中を撫でる。慌ててこぶしを握り締めたけど、その拳も強く握られ、全く動かせなかった。そんな健一郎の強引さが怖くなって、涙が目じりに溜まる。

「やだっ! 離して!」
「少しはわかりましたか?」

 そう言って、健一郎が目の前で微笑んだ。

「ど、どうしてそんな意地悪なことするのよ」
「危機感がないからですよ」
「……なにそれ」

 危機感、とか意味が分からない。
 少なくとも藤森先生は、口が軽いだけで、本当にひどいことをするような人にも思えなかった。別に危機感を持つべき相手ではないだろう。
< 147 / 227 >

この作品をシェア

pagetop