幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
私が戸惑っていると、
「続きは家に帰ってからですね」と、健一郎が笑う。
「え? つ、続きって……」
そう聞くと、健一郎は楽しそうに笑ったあと、私の額にキスを落とした。
「本当に分かりませんか?」
「……分かりたくない」
「どうして?」
健一郎の笑顔は、決して純真無垢なものではなく、先ほどの怒っているものともまた違って、きっと何か……。
「なんか、そういう微笑みのときの健一郎って、絶対変なこと考えてるもん!」
そう、昨日の夜もそんな悪だくみするような笑顔してた!
なのに健一郎は、何食わぬ顔で、
「変なこと? できるだけ具体的に言ってみてください」と私に言う。
(絶対わかってて言ってる、この男!)
「言えるわけないでしょ! この変態! 仕事に戻る!」
私が赤くなる顔を隠すために、踵を返して歩き出すと、
「今日は早く帰りますから」と後方から声が降ってくる。
「早く帰ってこなくていい! ってか、私が今日は遅くなる! 仕事たまってるし!」
「待ってます」
「待たなくていい!」
(あぁ、もう。なんなのよ!)
イライラするけど、やっぱり少し早く帰ろうかと思ってる自分が本当にバカだな、と思う。
結局私は、体力の最後の一滴まですべて奪うようなことをするところを除けば、健一郎とくっついてるのは嫌いじゃないのだ。
―――変なの。いつの間にこんなに健一郎に染まっていっているんだろう。