幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
25章:年末と小さな不安
年度末もそうだけど、年末もなにかと事務処理がたまりやすい。
私は机の上に広がる書類の山を見てため息をついた。
私は目下の研究室の先生方の出張精算を済ませ、物品購入費の入力をしようと思ったところで少し休憩しようと思い立つ。時間は午後9時半。そんな時計の針を見たところで、ついウトウトとしてしまっていた。
(最近、眠くて仕方ないなぁ……)
「三波ちゃん!」
自分を呼ぶ声に、あわてて顔を上げる。
すると、そこには、心配そうな顔をした森下先生が立っていた。
「も、森下先生? どうしたんですか」
「どうしたってこっちのセリフ。こんな時間なのに研究室電気ついてるし。ノックしても反応ないから」
時計を慌ててみる。時間は午後10時10分。どうやら40分ほど、眠りについていたらしい。本気で眠ったのか、夢すら見なかった。タイムスリップしたかのような感覚だ。
私はつい口元を触る。涎は出ていない、よかった。
そう思って、思わず苦笑する。
「すみません、寝てました」
「みたいだね」
森下先生も同じように笑った。
ふと、森下先生が少し酔っているときと同じ顔をしていて、今日は病院の先生方の忘年会があったことを思いだす。
「森下先生は忘年会だったんですよね。病院のほうの」
森下先生は頷く。
そういえば、健一郎もその忘年会に出るといっていたっけ。
病院の忘年会は通例で、大きな感染症など流行っていなければ、病院の近くの大学内学食を貸し切って12月に入る前には行われる。
お酒もでるが、若手の先生ほど飲めなくなる。すべては、緊急対応が必要な患者さんが来た時のためだ。
健一郎も、森下先生も、毎年お酒は控えているらしいが、今回は飲んでくださいね、と後輩たちから念を押されたと言っていた。どうやら、他校からのゲストもいるらしく、飲まない、というわけにもいかないようだ。
結局どこの世界でも、付き合いというものはある。
自分の父も、その手の付き合いではしぶしぶ飲んでいたっけ。大学の先生だってそれは例外ではない。