幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
たまの休みくらいゆっくりしてほしい。くっついているのは嫌いではないが、健一郎の体調が心配なのだ。
よく妊婦さんに『一人の身体ではない』という表現があるが、医師も受け持ちの患者さんは何百人といる。健一郎が体調を崩し、その患者さんたちが困るのも良くない。
なのに健一郎ときたら、
「むしろくっついてないと体調崩しますし、あとで二人でやったほうが時間も半分です」
とニコリに笑う。
「いやだ! あとって、私は絶対疲れてそんなことする気力なくなるもん」
「じゃあ、あとで、僕一人で掃除も洗濯もしますよ。ならいいでしょ」
「どこまで食い下がるの! ほとんど毎日するのって、さすがに変だよ」
「知らないんですか? どの新婚も普通ですよ。新婚界の常識です!」
よくもまぁ、そんなことが堂々と言えたものだ。
そんな新婚界の常識など、知りたくないし、知って実行する気もない。
「何言ってんの、バカなの? 明るいうちにとか無理!」
「明るいからいいんじゃないですか。全部すみずみまで見て、触って、全身味わいたいです」
「や、やっぱり変態…!」
私が本気で鳥肌を立てていたころ、健一郎のスマホが鳴った。
病院かと思ったけど違うようで、健一郎が英語で対応し始めたので、私は何の用件なのかさっぱりわからなかったが、合間に『Dr.ハリス』という単語だけは聞こえた。
(ハリス教授が健一郎に何か用事だろうか……?)
私の胸はふいに不安な音を立てる。健一郎は自室に入ってそのまま1時間ほど電話していた。