幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
―――夜半。
「三波さん」
その声に起こされて、私はうっすら眼を開ける。
目の前には心配そうな健一郎の顔があった。
「健一郎? おかえり。ごめん、夕食……」
夕食の出来の話をしようとして、やけにのどが渇いていることに気が付いた。
そういえば、視界もぼんやりしている。身体全体が熱い。
「大丈夫ですか」
「ふぇ?」
「すごい熱です」
健一郎が私のおでこに手を置く。
その手がひんやりと冷たくて気持ちいい。きっと寒い中、帰ってきたのだろう。
(私のことより自分のことを心配してよ……!)
そう思って私は健一郎の手を払いのけた。
「だ、大丈夫よ。別に大したことないから」
「だめですよ」
「本当に、大丈夫。ちゃんと薬も飲んで寝るから」
「でも!」
健一郎が心配してくれるのはわかる。でも……。
私はまっすぐ健一郎を見ると、
「お願い。健一郎にうつるほうが心配。明日は外来あるんでしょ。明後日からは出張だし」
私は健一郎に風邪をうつしてしまうほうが心配なのだ。
いくら健一郎は健康だからと言っても、どうしても気になってしまう。