幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
健一郎は、わかりました、と言って部屋を出ると、少しして風邪薬と飲み物をもってまた部屋に戻ってきた。
「これ、飲んでください。明日は先に本橋研にもよってきますから」
「休みの連絡ぐらい自分でするってば」
「これ、取り換えておきます。あと、汗、少し拭きましょう」
「んー……大丈夫」
首を横に振る私に、健一郎は私の肩を持つと自分の方を向かせる。
真剣な健一郎の目に、自分の目が捕らわれた瞬間、健一郎がはっきりと言った。
「僕じゃ不安かもしれませんが、少しくらい言うこと聞いてください。これでも一応医者なんですから」
「……うん」
私は働かない頭で、健一郎の言われるまま動く。
汗を拭いてもらってすっきりしたところで、私は、またベッドに寝かされる。
健一郎がタオルの処理を済ませ、体温計をベッドサイドに置いたところで、立ち上がった。
それを見ていると、ふと寂しさが押し寄せてきた。
ありがたいことに、私はあまり風邪をひかない。一人暮らしをしても、ほとんど風邪をひいたことはなかった。
実家で風邪をひいたときは、母や父がずっとそばにいてくれて、恥ずかしい話だが、甘やかされて育ったという自覚もある。
だからかもしれない。
「健一郎……。やっぱり手、握っててほしい」
そんなことを口走ってしまったのは。「ごめん。ちがう! 今のなし!」
(何言ってるんだろう! 健一郎にうつしちゃいけないってこと、誰よりもよくわかってるのに……こんなんじゃ、医者の奥さん失格だ)